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【読書の学校】ブックトークフェスティバル2019

「書店員の仕事」北田博充(二子玉川蔦屋家電)×北村知之(梅田 蔦屋書店) 司会進行・三砂慶明(梅田 蔦屋書店)

PART1はこちら

三砂:第2回は、書店員の仕事についてお聞きします。

三砂:書店員の仕事は、接客というのも無論ありますが、結局、行きつくところは棚なんじゃないかと思っているのですが、おふたりはどうお考えですか。

北田:棚というよりも、たぶんコミュニケーション能力だと思います。

三砂:コミュニケーション能力ですか。

北田:コミュニケーション能力って2つあるじゃないですか。棚を介した間接的なコミュニケーションと、お客さんに接客する直接的なコミュニケーションと。書店員にはその2つの能力が欠かせないですよね。棚も接客もどちらもコミュニケーションなので、自分が出したいものを出すというよりは、お客さんのことを知って棚に反映させていくことが大事ですよね。どちらかというと、商品のことを知っているよりも、お客さんのことを知っている人のほうが優れた書店員なのかなと思います。

北村:そうですね。その本を読んだことがあって、感想が言えて、自分にとっていい本かどうかをジャッジできるというのが商品知識じゃなくて、その本をどういった人が求めているのか、みたいな想像力のある人が「商品知識がある」というようなことなんやろうなと思います。

三砂:書店員の知識=読書量<想像力 は、よく北村さんがおっしゃってますよね。少し解説してもらえますか?

北村:新刊の段ボールを開けたときに、自分が読みたいと思う意味での「いい本」と、「めっちゃ売れそう」とか「あの本が売れてたんやから、これだって絶対イケるやろうな」という意味での「いい本」は違って、書店員にとっては後者の方が重要な商品知識なんじゃないのかなと。

北田:そのとおりですね。1日に約200点も出ている新刊を全部読めるわけではないですから。基本、書店員の仕事って、読んでいない本をどう判断して売っていくかだと思うので。読んだ本をレコメンドして売っていくのって、別に読者にでもできるじゃないですか。書店員に必要なのは、その本がどういう系統の本で、何と並べるべきで、どういうお客さんにどの程度売れるのかを、ひと目で判断できる情報分析力だと思います。

三砂:でも、書店員の本って、基本的に読んでいる本について書いてませんか?

北田:本のことというより、どちらかというと、技術とか思想についてですよね。

北村:そうですね。有名書店員によるブックガイドもありますが、他業種の仕事術の本と同じで、思想と技術がメインですね。あとはちょっとイイ話とか、苦労話の本かな。

北田:思想については言語化しやすいですが、技術を言語化することは難しいのかもしれません。「WEB本の雑誌」で連載していた矢部さん(矢部潤子・トゥ・ディファクト)の「書店員矢部潤子に訊く」はめちゃくちゃ面白いですよね。あそこまで細やかに技術が記されているものって、今までほとんどなかったんじゃないでしょうか。あれこそ書店員の教科書になりえるものだと思います。書籍化が待ち遠しいです。

三砂:北村さんは『スリップの技法』(苦楽堂)がでたとき、書店員の技術をここまで言語化しているのは素晴らしいと言ってましたね。

北村:そうですね。書店員からしたら、スリップの活用方法って、当たり前のことっちゃ、当たり前のことなんですが、ここまで言語化して整理してくれていると、使える本だと思います。ぼくは一応書店経験が豊富なほうだとは思いますが、どの書店でも書店員が培った技術が継承されることってなかなかないですね。会社や店にそれを財産として蓄積しようとする考え方もなかったし、書店員も感覚的に仕事していて、理論で語れる人が少ないという理由もあるのかも。

三砂:論創社の「出版人に聞く」シリーズは、どうですか?

北村:当時、実際に本屋で働きながら読んでいた感想で言うと、わりと武勇伝というか成功談みたいなところがあって、それが参考になるかというと正直あまりなかったなと。読み物として面白く読んだというのはすごくあったんですけれど。

北田:随所でもうちょっと深掘りしてほしいですよね。さらっと浅いところをなめていく感じなので、もうちょっと。分量が短いというのもありますけど。

三砂:私はブックガイドとして読みました。『「今泉棚」とリブロの時代』で紹介されていた『存在の大いなる連鎖』(筑摩書房)はこの本がなかったら出会わなかったです。私はすぐに感動してしまうので、4,500円の『アンチ・オイディプス』を一日で300冊売ったとか、「別冊宝島」の『現代思想・入門』を5000冊売ったとか、そういう話を読むと、こんなことが可能なのかと興奮してしまいました。

北田:伊藤清彦さんの『盛岡さわや書店奮戦記』と、古田一晴さんの『名古屋とちくさ正文館』は特に面白く読みました。インタビュー形式ではなく、おふたりが書店員の技術について本を書いてくれたらいいのに、と思います。それこそ書店員の教科書になるでしょうし。

三砂:インタビューと構成をやられている小田光雄さんの『書店の近代』(平凡社)の読者だったので、いち読者としていえば、あのクオリティで徹底的に取材して書かれたら、「書店員の教科書」として不滅の本になったんじゃないかなと思いました。

いい本屋とは?

三砂:ざっくばらんに伺いますが好きな本屋はどこですか?

北田:新刊書店だったら、ちくさ正文館、南阿佐ヶ谷の書原、あと東京堂、その3つぐらいですかね。書原は閉店しちゃいましたけど。以前荻窪に住んでいたときは、新刊は南阿佐ヶ谷の書原まで行って買っていました。古本はささま書店ですね。そこへ行けば、だいたいなにか買いたい本が見つかります。TitleができてからはTitleで新刊を買うようになりました。

三砂:全部好きな本屋だ(笑)。私も高円寺界隈に住んでいたことがあって、南阿佐ヶ谷の書原は最寄りの本屋でした。

北村:書原は、めっちゃいい本屋ですよね。

北田:店に入った瞬間に感じる空気感が他の書店とは圧倒的に異なりましたね。

三砂:なくなりましたけど、書原の霞ヶ関店もすごかったですね。たしか、哲学がアダム・スミスからはじまっていて鳥肌が立ちました。立上げから閉店まで一気通貫された店長の牛久保さんが現在、未来屋書店にうつられて、りんくう泉南店で人文書を大きく導入されて話題になりました。

北村:書原、好きやね(笑)。

三砂:追いかけてます(笑)。りんくう泉南店がすごいのは、出版社の予想を覆して大きな結果を出しただけでなく、牛久保塾ではないですけれども、書原の代名詞である「スリップ」の技術が、未来屋書店の中に着々と継承されていることですね。いつか牛久保さんのお話を聞かせてもらいたいです。北村さんはどうでしょう?

北村:僕は、それこそさっき「いい本は2種類ある」と言ったように、客として自分の趣味の本を買いに行くんやったら、京都の三月書房とか名古屋のちくさ正文館、Titleが一番いい。けれども、書店員として自分もこういう店をやりたいとか、ここで働いてみたいなと思ったのは、熊本の長崎書店ですね。

三砂:北村さん、よく言ってますよね。北村さんの話を聞く度、長崎書店に行きたくなってしまう(笑)。

北村:長崎書店に初めて行ったときは、めっちゃすごいと思って興奮しました。とにかく棚への手の入り方が素晴らしい。熊本には橙書店もあるし、いい古本屋もあるし、街の雰囲気もいいし、移住したいくらい(笑)。僕は、以前、海文堂書店という神戸の老舗書店で働いていたのですが、そこはPOSを入れないスリップ原理主義で、17万冊くらいの在庫を担当者が単品管理していました。220坪の店に、棚担当者が9人もいたので、それだけ棚に手が入っていて、それこそ業界の評価としては「いい本屋」だったと思います。ただそれでも売上不振で、2013年に閉店しました。長崎書店を見たときの正直な感想は、その海文堂を現代にアップデートしたらまさにこれだと。たぶん150坪あるかないかの規模だと思いますが、他書店に比べて絶対に棚担当者は多いはず。三砂さんは?

三砂:自分なりによく考えてみたんですけど、私はたぶん、古本屋ですね。

北村:どういうこと?

三砂:学生のときから梅田 蔦屋書店の立ち上げまで、高円寺界隈の古本屋の先輩方に本のことを教えてもらっていました。今はありませんが、中でもサンダル文庫の岩崎さんには特にお世話になっていて、お店にある本を自由に読ませてもらい、読んだ感想をいうと、晩御飯を食べさせてもらえるという黄金期がありました。

北村:それは仕事?

三砂:いや、学生のときの話です。そのとき、荻窪の新刊書店の信愛書店の原田さんと岩崎さんが立ち上げたフリーペーパーで、デビューされる前の古本屋ツアー・イン・ジャパンの小山力也さんと一緒に、古本屋のガイドや読書案内をさせてもらってました。

 大学の先生からも絶版本や品切本を探すのを頼まれたりしてたので、どの古本屋になにがあるかの案内精度は高かったと思います。

 なので、棚の考え方とか並び方の原型は、中央線の古本屋で学んだことを実践している気がしてます。今でも東京に行く度、なるべく見に行くようにしているのは、高円寺の元・都丸書店分店の藍書房と、荻窪駅のささま書店と西荻窪駅の音羽館ですね。この魔のトライアングルに捕まって早20年ぐらい過ぎましたが、行く度知らない本に出会ってしまう。

北村:そうなんや。

三砂:平台の考え方と見せ方は、仕掛け番長こと栗俣力也さんがおられた三軒茶屋TSUTAYAを参考にしてます。いま、五反田に移られたので、そっちはまだですが、栗俣さんの売場って、エネルギーがみなぎってて、計算通りに買わされてしまうだけでなく、買った本がこれまた面白いからまた行ってしまうんですよね。あのクオリティの仕掛けを毎月、毎週やり続けるのは、それだけでもめちゃくちゃ大変なのに、小説の原案書かれたり、執筆もされたり、雑貨の新商品開発したり、いつ寝てるんだろうと一日の過ごし方が気になります(笑)。街の本屋で、大好きなのは、千駄木の往来堂書店。書店でいえば、ジュンク堂書店です。

北田:ジュンク堂書店はいいですよね。僕は小さい頃からジュンク堂のサンパル店で本を買っていました。ジュンク堂で育ったようなものです。

北村:僕もサンパルのジュンクはよく行きましたね。高校時代にその裏にある予備校に通っていたので、授業サボって入り浸っていました。

三砂:ではおふたりはジュンクですれ違ってたかもしれませんね(笑)。私は東京生活が長かったので、無くなりましたけど新宿のジュンク堂書店が好きでした。書肆山田とみすず書房の本が並んでいた真っ白な棚は本当に壮観で、あの時の感動は忘れられないです。あとなんといっても、本の成り立ちが叙事詩のように表現できる本棚のスケールは、やっぱり憧れますね。

北村:その気持ちはわかるなあ。

三砂:まず最初に好きな本屋を聞いたのは、実はこの次の質問の伏線でして。「いい書店」とは一体どういう書店なのかが聞きたいです。あと「いい棚」とはどういう棚なのか。これも言語化は難しいと思いますが教えてください。

北田:「いい人」とかと同じレベルの質問じゃないですか(笑)。

三砂:失礼しました(笑)。でも、おふたりのさっき答えてくれた本屋って一緒ですよね。ちくさ正文館やTitleって、本が好きな人で、嫌いという意見を聞いたことがないですし。いい書店であり、いい棚である共通項があるんじゃないかと思うんですが。

北田:一言で言ったら、お客さんが自分と向き合える場所かどうかということじゃないですか。

三砂:自分と向き合える……。どういうことですか?

北田:書店に足を運ぶときって、買う本が決まって行く人ももちろんいるけれど、なんとなく棚を見ながら自分自身と対話をするというか、そういう時間を求めていると思うんです。少なくとも僕はそうなんです。なので自分自身と向き合える場所であるというのが、僕にとっての「いい本屋」なのかな。自分にとっての「いい本屋」って、人それぞれですよね。あとは、なにかを買いに行く場所というよりは、誰かに会いに行く場所かもしれないですね。店があって、店主に会いに行く、みたいな。

三砂:北村さんはどうですか?

北村:めちゃくちゃ難しい質問ですね。なんでこんなに本というのが多品種なのかというと、やっぱり人に直接紐づいている商材だからじゃないかと思うんです。それだけいろいろな人がいるから、これだけいろいろな本があるんですね。本の数だけいろいろな価値観があって、ちくさ正文館ををみんなが「いい本屋や」と言うのは、周りにいる価値観の似ている人の意見を聞いているだけでしかなくて、ちくさを見ても「全然自分の欲しい本がないわ」という人だって絶対いる。だからその人にとっては必ずしもいい本屋じゃないし、万人に対しては本当に難しいですよね。たまに行くだけでは、「いい」「悪い」、そういうジャッジはやっぱりできないと思うんです。

三砂:つまり、通えないとジャッジはできないということですか?

北村:はい。だから生活圏に本屋があって、そこを最寄りの店として日々利用しているお客さんが満足している限り、そこは絶対「いい本屋」でしかないと思うんですね。「あの店が」「この店が」といって、本屋を看板で判断する人って業界の人間か、一部の本屋好きって言われる人だけじゃないですか。だから長崎書店がなんで「いい本屋」だと思ったかというと、棚を見るだけでそこに通っているお客さんの顔が見えるというか。その街にはどんな人が暮らしているのかがわかるんですよね。それがすごくよかった。

北田:観光地で行くという感じじゃなくて、家の近くにあって日常的に行く本屋。

北村:そうですね。こんな本屋が近所にあったらな、みたいな。

三砂:蔦屋書店も、それぞれの地域の研究所であり、地域の文化に貢献できる書店でありたいですよね。北田さんは、今度、二子玉川で「本屋博」を企画されると伺いました。出版社のブックフェスは、よくありますが、本屋がやるブックフェスは聞いたことがありません。

北田:2020年1月31日(金)・2月1日(土)の2日間、二子玉川のガレリアという半屋外の場所で、約40の本屋が出店する本屋のフェス「二子玉川 本屋博」を開催します。キッチンカーも出店しますし、常時ライブとトークイベントも開催します。オリジナルグッズやZINEも制作中です。

 ひとつの場所に40もの本屋が集まったら凄い景色になるだろうなと思うし、本屋ファンを増やせるフェスにできればなと思っています。ひとりひとりのお客さん、一店一店の本屋、全員が主役になれるようなフェスにしたいです。

三砂:ありがとうございました。2020年1月31日と2月1日は、みんなで二子玉川に伺いましょう。

北村:で、書店員の教科書。

三砂:はい(笑)。ありがとうございます。

二子玉川 蔦屋家電 北田博充氏が選ぶ「書店員の教科書」5冊

三砂:では、北田さんの教科書を5冊お願いいたします。

北田:『まちの本屋』は三砂さんにとられてしまったので。

三砂:まだ言ってる(笑)。

北田:僕は『菊地君の本屋』(アルメディア、永江朗)、『劇場としての書店』(新評論、福嶋聡)『書店ほどたのしい商売はない』(日本エディタースクール出版部、上村卓夫)『盛岡さわや書店奮戦記』(論創社、伊藤清彦)『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版、内沼晋太郎、版元品切中)にします。

三砂:すみません。

北田:僕は10代の頃、アメリカ村にあったヴィレッジヴァンガードが好きだったんです。就職活動で取次の大阪屋を選んだのもヴィレッジヴァンガードと取引があるからという理由でした。1年ほどですが、ヴィレッジヴァンガードの営業担当もしていました。

三砂:そうなんですか。知らなかった。

北田:それで菊地社長(現会長)ともお会いできて、ミーティングの場でお話できたりもして、そんな幸せな時期が一瞬だけあったんです。『菊地君の本屋』は今でもたまに読み返すくらいバイブルな本です。

『菊地君の本屋』

 菊地さんは元々出版社勤めをされていて、そのときの先輩が本屋で独立する際についていき、そこで書店勤めをしたのちに、独立してヴィレッジヴァンガードを創業しました。書店で経験を積みながらも、その経験にとらわれない考え方を持っておられる稀有な方だと思います。

 僕が学生だった頃は、まだヴィレッジヴァンガードもしっかりと本に力を入れていて、いつ行っても発見がある面白い本屋でした。15年ほど前、大阪屋に入社してヴィレッジヴァンガードの担当になった頃、「京都でもの凄く面白い棚をつくる人がいる」と噂になっていたのが花田菜々子さんでした。今はHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEで店長をしていますね。

三砂:そのころからお付き合いがあったんですか。

北田:その頃は面識がなかったんです。でも名前だけは頻繁に聞いていました。よく考えると、ヴィレッジヴァンガードって、ユニークな人材を何人も輩出していますよね。花田さんもそうだし、いか文庫の粕川ゆきさんもそうだし、NUMABOOKSの松村孝宏さんもそう。3人とも既存の価値観にとらわれない方だと思います。

 その一方で、菊地さんの書いていることって、いろんな本屋の方がよく言うようなベタなことだったりもするんです。「書店の仕事はいかに本を棚に入れていくかじゃなくて、いかに棚から抜いていくか」、「置けば売れることはわかっているけれども置きたくない」、「商品は売れるものではなく売るものだ」とか。

三砂:意志のある発注ですね。

北田:そうです。あと、「手を通過しないと本というのは覚えられない」、「本屋にとって大事な資質は記憶力」とか、既存の価値観にとらわれない天才である一方で、ものすごく基本を大事にしている。そのバランス感覚がたまらなく好きですね。 

『劇場としての書店』には、書店員にとって一番大事なコミュニケーション能力のことが書かれていると思います。

『劇場としての書店』

 先程も少しお話しましたが、書店におけるコミュニケーションには、間接的コミュニケーションと直接的コミュニケーションとがあって、そのどちらもが書かれている本ですよね。ぼくが今のお店でコンシェルジュ研修をするときに推薦図書としてお薦めしている本です。

三砂:本当ですか。

北田:『劇場としての書店』と『まちの本屋』(ポプラ社)は読んでもらうリストにいつも挙げていますね。

三砂:今度、研修資料をください。勉強したい。

北田:「接客において勝ち負けはない」というフレーズが特に印象に残っています。「あるのは、どちらも勝つか、どちらも負けるかのいずれか」。その通りですよね。お客さんが出会いたい本と出会えれば、お客さんも我々も勝ちなんです。本屋って、書店員とお客さんの共闘の場ですから。

 それから、もっとも印象的だったのは、「プロにはなれなくてもプロ意識を持つことはできる」というところ。「プロ意識とは、基本を大事にすることと同義」、「お客様が本を買ってくださることに対する本当の感謝の気持ちを相手にわかるように表現すること、これが書店員にとってのプロ意識なのだ」と書いてあって、とても共感できたし、自分の指針になっているような気がします。我々コンシェルジュって、お客さんに本を薦めることが仕事ではありますけど、正直お客さんの方が本に詳しいし、知っていることも多いじゃないですか。僕なんか、常連のおじいちゃんと本の話をしながら、知らなかったことを教えてもらえるときが一番楽しいですから(笑)。

 3つ目の『書店ほどたのしい商売はない』は……。

『書店ほどたのしい商売はない』

三砂:これ、むちゃくちゃいい本ですよね。気が合うなあ(笑)。

北田:10年以上前の本なので、一見古いと思われるかもしれませんが、普遍的なことが書かれていると思います。もっとも印象的なのは、「この業界は出版社、取次店、書店の三者のみで、買う側の読者のことなどまったく蚊帳の外です」と仰っている点です。これは心底共感できますよね。これからの時代は、読者目線で仕事ができる書店員と書店だけしか生き残れないはずだし、上村さんは、「考えない書店員は辞めていき、考えない書店は閉めていく」とまで仰っています。不況が続けば続くほど、読者のことが後回しになり、目先の利益をどう生むかばかり考えてしまう。「本屋がなくなって一番困るのは本屋」という状況になってしまうと切ないですよね。

 あと、すごくシンプルなんですけど、「書店の生命線は、仕入れと配置です」という言葉が好きですね。さらっと書かれていて、言葉通りに読むと「ふーん」って感じでスルーしがちですが、仕入れと配置がなにより難しくて、奥深いわけですから。欲を言うと、この仕入れと配置の極意をもっと事細かに記してほしいわけですけど、この本も論創社の「出版人に聞く」シリーズと同様でインタビュー形式なので、それほど技術について深掘りはされていないです。

三砂:次は『盛岡さわや書店奮戦記』!!

北田:やっぱり、「雑誌の時間差攻撃」が印象的ですよね。これを読んで、同じようなことを試してみたことがありました。仰っていることがすべて理にかなっているから腹落ちします。あと、面白いのは「自分の少ないリソースを売れる作家には絶対に使わない」「明らかに売れるに決まっているのに、どうしてわざわざ読まなければならないのか」というところ。当然ですが、僕も村上春樹とか絶対に読まないです。時間の無駄ですから。読書も仕事のうちですし。

三砂:ラストは、内沼さんの本ですね。全部いいから、なにを選ばれるのか、実はすごく楽しみにしてました。

北田:『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』からはとても影響を受けていると思います。

『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』

三砂:具体的にどういう影響を受けてるんですか?

北田:うまく言えないですけど、考え方とかですかね。自分だけの仕事をいちからつくりあげた方ですから、ほんと凄いと思います。しかも、28歳でこの本を書いているわけだから、20代半ばで自分の仕事を確立させていたわけです。内沼さんの思考には「あれをやってはいけない」とか「これは前例がないから」とか、そういう制約なんかが一切なくて自由なんですよね。内沼さんは書店員ではないですけど、書店員が学ぶべきものをたくさんお持ちだと思います。

PART3へ続きます!

10月14日(月・祝日)午後1時から開催

【読書の学校】ブックトークフェスティバル2019 
絶賛受付中です。お申込みは、下記から。
https://store.tsite.jp/umeda/event/humanities/10042-1658191001.html 

2020年1月31日、2月1日の二子玉川 本屋博
https://store.tsite.jp/futakotamagawa/bookshop-expo/

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