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『ノマドという生き方』

ノマドは現実世界の「冒険者パーティ」? ――『ノマドという生き方』推薦文 推薦者:足立裕太

【編集部より】
大学生協で働く足立裕太さんから、一風変わった「会話劇」による推薦文が届きました。オンラインゲームの“冒険者パーティ”に憧れる学生たちの対話を通して、『ノマドという生き方』が現代の若者にどう響くのかが描かれています。


A: あー、冒険者になりたい。

B: どうしたの急に。MMORPG(※)のやりすぎ?

※MMORPG…世界中の人がインターネットでアクセスし、広大な世界を複数人で冒険するオンラインゲームだと思ってください。

A: 溢れる好奇心が抑えきれないんだ。いろんなところを旅して周ってみたい。

B: ふーん。世界一周バックパッカーとかしてみたら。

A: ん-、それとはちょっと違う。いろんなところに次々と行きたいというよりは、行く先々で小さなことでもいいから何かを成し遂げていきたい。先に進むことを目的にするのではなくて、あれやこれやとひっかかりながら旅をしたいっていうか。

B: 最後に待ち受ける強敵を倒しにいくよりは、その道中で人助けをすることにやりがいを感じるタイプなんだね。

A: そうそう、そういうこと。

B: そんなキミにはこの本がお薦めかも。貸してあげるから読んでみたら。

A: 冒険者には読書も重要な嗜みだし、レベルアップのためにも読んでみるよ。

 

~数日後~

 

A: 先日の本、とても刺激的だった。ありがとう。

B: それはよかった。冒険者になるのに役立ちそう?

A: かなり参考になるよ。こういう生き方があるってことを知らなかったから。

B: ノマドっていうと、頻繁に移動を繰り返して、どこにも属してない根無し草みたいなイメージがあったんだけど、ちょっと違うんだよね。

A: 家族単位で移動して移動先でお金を稼ぎ、また移動していくっていう生活様式は冒険者パーティのイメージが重なるよ。パーティで行動するのももちろんいいけど、たまにはソロプレイもいいなとか、いろいろ想像が膨らむなぁ。

B: ノマドでいうところのパーティ=家族を作るなら、まず恋人をつくるところからだね。

A: 急に現実的な問題に直面した。いや、友達でつくるパーティっていうのもアリでしょ。ノマドの在り方や考え方も変わってきているそうだし。

B: 車で暮らす現代のノマドは束縛されない反面、人との繋がりが希薄だと感じることがあるとも書いてあったよね。そういうノマド同志の横のつながりをつくる活動なんていいかもしれない。

A: ギルドを作るってことか。ギルドマスターになって、冒険者の支援をするのも悪くないなぁ。でもそれは、自分が冒険者を経験した後のセカンドキャリアにとっておこう。

B: あくまで冒険者になることは譲らないのね。

A: 冒険者ってさ、自由奔放に見えて実はいろんなものと繋がってるのが素敵だなと思ってるんだ。いろんな町に立ち寄って、そこで住人と会話をしたり、問題を解決したりして、親交を深める。で、次の目的ができたら、いや目的がなくても他の地に行って、新たに親交を深める。その繰り返しで各地に繋がりができる。

B: ゲームにおける冒険者っていうのは確かにそういうイメージだね。

A: そして久しぶりに立ち寄った町が発展してるとか、自分たちに問題が起きたときには思いもかけない人たちが助けてくれるとかいったイベントが起こる。それって、ずっと同じ場所や集団に属しているときとは違った感情が湧くものだと思うんだ。

B: そうやっていろんな所を回っていると、ある程度のところで落ち着いて定住したいっていう気持ちになることがあるかもしれない。ノマドでも、わりと定住に近い生活の人たちがいるって書いてあったね。

A: 書いてあった。でもそれは生涯そこに留まり続けるっていう意味じゃなくて、いつでも動き出せる状態なんだ。

B: うん。居場所は動いていないけど、心はいつでも動き出せる。

A: ノマドの強みは、絶対的なホームタウンが大事なのではなくて、ホーム自体と一緒に移動できる柔軟さだと思う。冒険者になったら「このパーティはもう立派なホームじゃないか」なんて言ってみたい。

B: 話してるうちに、冒険者になるのも悪くないなと思えてきた。

A: じゃあ一緒にパーティを組んでくれる?

B: 現実的に“まずはノマドから”でどうかな。

(了)

あだち ゆうた/書店員


【目次】

はじめに

I部 ノマディズムという生存戦術

1 近くにいるノマドたち

2 様々な呼称と様々なルーツ

3 エスカルゴのように転がる――住まいと共に動く暮らし方

4 住まいと身体をつくりあげる―モバイルハウスの住まい方

 

II部 動きの中の共同性

5 二つの文化を生きる――定住する移動生活者

6 ばらばらに一緒にいる――密にゆるくつながる家族

7 群れすぎない――共同体の分散力と持続力

8 ノマディズムの楽さと自由

 

Ⅲ部 別様の社会的現実を生きる

9 ガジェとまじわる――ジプシー巡礼祭

10 神とつながる――ペンテコステ派の信仰集会

11 あいだで生きるディアスポラの構え――アイデンティティ政治を超えて

むすび

初出一覧

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著者略歴

  1. 足立 裕太

    東京大学生協駒場書籍部 店長

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