七月の一ヶ月間、京都の街を彩る祇園祭。神輿渡御と山鉾巡行を軸に、さまざまな祭事が行われ、駒形提灯が祭の夜を照らす。2023年、祭は四年ぶり、本格的に復活する。
祇園祭の由来は平安時代まで遡る。頻発する疫病や自然災害を鎮め、国と民の安寧と幸福を願い、神泉苑に神輿を送ったのがその始まりだ。
千年もの歴史をもつ祇園祭。そこにはさまざまな不思議と謎が潜む。
たとえば、ご祭神「素戔嗚尊」と習合していた「牛頭天王」という疫神。家々の門戸に掲げられる「蘇民将来之子孫也」という文字。祭に表出する霊獣や瑞祥の造形。水と神仙世界の物語。中国思想を研究する筆者の立場から、祇園祭の歴史に深く眠る古層を掘り起こし、あらたな眼で祇園祭を再発見する。(水野杏紀)